SF冒険小説「星空に志を抱いて」です。この作品は「少年が旅立つ時」の続編です。

星空に志を抱いて 第1話(一)


 とうとうハンスは宇宙に旅立った。夢にまで見た星空の世界へと。ハンスは飽きることなく窓辺で瞬かない星々を眺めていた。服装もグレーの宇宙服を支給されていた。
 「ハンス君、まずは私の船によく来たね。私は船長のマーシャル・クレンショウだ。酒と博打が大好きなんだが、博打の方は細々とポーカーで賭けるだけなのでご心配なく。辺境紳士連盟では本名のマルティン・カークで通っている。宇宙船の運転が得意だが、戦闘能力も結構高いぞ、わっはっは」
 クレンショウ船長はお気に入りのパイプを口にくわえたまま話していた。もちろん、ここは宇宙船の中、煙草の煙は厳禁である。パイプの中には近年発明された香りだけを楽しむ新種の煙草が入っている。この船長少しばかり変わり者で宇宙船の中でもカウボーイ・ハットをかぶっている。それが自分らしさなのだそうだ。
 「やあ、はじめまして、俺はエドワード・マネーだ。エディーって呼んでくれ。みんなは俺のことをクールだ、クールだ、って言うけどな。俺って結構心優しい奴なんだぜ。お前さ、これからハンスで行くのか?それともマイクで行くのか?お前は知らなかったんだろうが、本名はマイク・クラークだったんだろ?しかし、キャプテン・クラークの子孫だなんて驚きだよな。あの冒険小説のヒーローだもんな。実在することさえも知らないヤツが多いぜ。ま、よろしくたのまぁ。」
 エディーは自分でも言っていたがクールなナイス・ガイと言えばみんながエディーを思い出すような、そんなダンディーな男である。女たらしと言われるのが一番嫌いで、それは実際に女性遍歴が多いから、違うと言えば嘘になるからである。
 「さて、僕の番だね、僕はジェラード・スマート。船長とエディーとは前にもこの船に乗せてもらったので顔見知りなんだぜ。まあ、君とは変装の老人形売りとしては、ずっと連絡を取り合っていたね。素顔でのご対面は今日が初めてというわけさ。エディー程じゃないが、僕だって女性には結構もてるんだぜ。」
 「おいおい、いつ俺がもてたんだよ。人聞きの悪いことを言うなよ。」途中でエディーがジェラードの挨拶にくってかかった。しかし、それが互いに冗談であることはよくわかっている、そんな親密さがこの三人の大人達にはあった。
 船長がハンスの肩をしっかりと握ってこう言った。
 「まあ、君もキャプテン・クラーク4世なのだし、これまでのような気楽な生活はできないが覚悟してくれたまえ。船の中でも色々と訓練を積んで、我ら辺境紳士連盟の明日を輝かしい物にすることに力を貸してくれたまえ。君、君、さっきから黙っているがもしかして緊張しているのかね。おや?・・・
 ジェラード、毛布でも掛けてやりたまえ、この子はわしらの話を聞きながら、居眠りをしておる。いやはや、大した神経の持ち主だな。やはり大物の片鱗ここにありという印象だな。」
 「はい、船長。しかし、ハンスは疲れているんですよ。父親を昨日、亡くして今日は宇宙船への密航騒ぎで、無理もないことですよ。しかし、このキャプテン・クラーク4世にはなんだか期待してしまいますな」話を聞いているうちに眠ってしまったハンスはそのままロビーで一夜を明かした。ハンスの旅はまだ始まったばかりである。 
 翌日の朝、ハンスは誰よりも早く起きた。そして家でいつもやっていたようにロビーへと出るとモップで床を掃除した。そこへジェラードがやってきて声をかけた。
 「よぉ、おはよう、ハンス。お前早いなぁ、しかし、掃除なんて当番の時だけでいいんだぜ。」
 「あ、そうなんですか?いつもの習慣ですからね。父がうるさかったものですから。」
 「ハンスは今日からは、剣技の訓練を始めることになってるぜ。相手はこの僕さ。ここの三人の中では僕が一番、剣技は弱いんだよ。それでも辺境紳士連盟剣技検定では2級なんだぜ。まあ、な、人は2級なんかで宇宙を渡り歩くなんて命が惜しくないのか?なんて陰口利いてるだろうけどな。ハンスは親父さんと剣技の稽古はしてないんだろう?」
 「ええ、うちの父は何かと忙しくしていたし、僕にはできるだけ子供らしく遊びなさい、って言ってました。」
 「ふうん、そうか。お前の親父さんはたしか四段だったんだぜ。結構強い方だよな。ここの奴らはエディーが三段で、船長が二段だぜ、たしか。
 「へえ〜、そうなんですか。うちの父は秘密任務については僕には教えないまま死んでしまったんです。だから、剣技のことなんて一度も聞いたことがなかったんですよ。」
 「そうだったのか、ホントにいい人ほど早く逝く、って言うけどな。
 あ、そうそう、ここでの訓練は場所が狭いだろう?あまり本格的にはできないんだ。残念だがな。でも基本的な攻撃と防御くらいはマスターできると思うぜ。」
 「はい、楽しみにしてます。」
 そこへ頭にタオルを被ったエディーがやってきた。
 「はぁ〜〜、やっぱり朝はシャワー浴びねえと目が覚めねえよな。よぉハンス、朝から掃除してるのか?そんなの今日の当番の船長に任しとけよ。ああ、そうだ、ハンスお前には今日から俺が曲芸を教えてやるからな。」
 「きょ、曲芸!?」
 「そうだ、曲芸だ。俺達は任務によってはサーカス団に扮して敵地に乗り込むことがよくあるんだ。覚悟しとけ、難しいぞ。」
 どうやら宇宙船生活は初日から体力フル活用の激しい物になるらしかった。


 「おはよう、ハンス、曲芸の稽古は厳しいが、剣技も曲芸もホロ・デッキでホログラム映像を相手に基本パターンを繰り返し練習するんだ。ハンスはそんなことは知らなかっただろう?ま、ゲーム感覚でやれよ。」とカーク船長が出てくるなり笑いながら言った。ジェラードが液晶画面のニュースから目を離して言った。
 「あ、そうか、ハンスはもしかしてホロ映像なんて観たことないのかな?KE2星は田舎だからな、進んだ技術のものはないんだよな。」
 「はい、そうです。一番進んでいるのが宇宙港でした。」
 「なるほどなあ、じゃあ、最初は感覚が新鮮で稽古にも身が入るかもな。えっと、ハンスは朝食まだなんだろう?こいつは知ってるか?」
 「なんでしょう?この機械は飲み物が出てくる機械に似てますね。」
 「こいつはな、フード・ジェネレーターと言って料理してくれる機械さ。何か食いたい物はあるかい?」
 「あ、カレーライスが食いたい!」
 「わははははは!!!」三人の大人達は一斉に笑った。
 「可笑しいですか?」とハンスは三人を見渡して訊ねた。カーク船長が首を横に振りながら
 「いやいや、あまりにも子供らしい返事なんでな。俺もカレーは好きだぜ。よし、カレーだ。カレーライスだ。甘口のな」
 「ぴこっ」と音がして下の窓口にカレーの入った皿が出てきた。
 「そんな、僕はそこまで子供じゃないです。カレーは辛口がいいんです。」
 「わははは、船長、勝手に注文したあんたが悪いんだぜ。その甘口カレーはあんたが責任とって食えよな。」とエディーが言った。カーク船長は
 「とほほほ、この俺様が朝っぱらから甘口カレーかよ。」
 「よし、ハンス、普通のカレーでいいのか?激辛とかじゃなくて?」
 「はい、そうです。」
 「カレーライス」
 「ぴこっ」
 「いただきまぁす」とハンスはカレーライスを平らげた。カーク船長が言った。
 「はぁ、甘口カレー不味くはないんだがな。しかし、ひどい目にあった。ハンスはな、一時間後から剣技の稽古だ。ジェラードよろしく頼む。わしとエディーはここでチェスをしているから。ハンスは管制室でお留守番してくれ。なーに、ただ座ってて何か警報が鳴ったらわしたちを呼びに来ればいいんだ。」
 「はい、わかりました。」


 ハンスは管制室で船長の席に座ってなんとなく自分が船長になった想像を巡らせて一人で楽しんでいた。そう普通宇宙旅行とはいえ、そんなに危険な目には遭わないのが普通なのだ。しかし、ハンスは運が悪かった。
 いきなり「びーびーびー」と警報が鳴りコンピューターが喋り始めた。
 「緊急事態、緊急事態、小惑星のかけらが接近中。本船との衝突コースに飛来しています。3.2.1」
 「う、嘘だろう?!」
 ハンスが船長を呼びに行こうとした時に「ががーん」と大きな音がして衝撃が船中に走った。


 すさまじい轟音がして耳がツーンとなりハンスは思わず耳をふさいだ。見ると正面のメインスクリーンの横に穴が空いているのが一瞬だけ見えた。すぐさま天井の隅の扉が開いて自動的に水色の大きな玉が出されて、壁の穴を塞いでいた。これは緊急補修用の粘着性の液体なのだった。
 コンピューターはこんな事を喋っていた。
 「管制室正面に小惑星のかけらが衝突、外壁に破損、空気流出。警戒態勢警戒態勢、管制室の空気補充。警戒態勢解除。負傷者なし。」
 カーク船長とジェラード、エディーが慌てて管制室に入ってきた。カーク船長は大声で怒鳴っていた。
 「ハンス、ハンス、大丈夫かっっ???おおっ!!!ハンス無事だったな。具合はどこか悪くないか?おい、そんなにじっとわしを見て頭がぼうっとなっているのか?」
 「いえ、全然大丈夫です。ちょっとビックリしただけです。」ジェラードが、額に手を当てて笑いながら言った。
 「ははは、良かった良かった。安心したよ。預かったばかりのハンスに何かあったら亡くなったエドワードさんに申し訳が立たないところだった。ああ、良かった。」
 エディはカーク船長の肩に手を置いて
 「船長、声がでかいっすよ。ほら、ハンスは一瞬真空にさらされかけたから神経に障る声を出したらいけないかもしれませんよ。」
 「おお、そうだな。」
 「いいえ、僕は何ともないです。」
 「いや、一応医療用コンピューターに見てもらった方がよかろう。ハンス、こっちに来なさい。」と言ってカーク船長はハンスを管制室の入り口の横の電話ボックスみたいな物の中へ入るように手で示した。ハンスが中へはいると緑色の光が三回ハンスの上を通りコンピューターが綺麗な女性の声で
 「異常なし。ただし、今後の経過を慎重に診察する必要があります。」と喋った。
 ジェラードが大きな溜息をついてこう言った。
 「とりあえずな、今からやるはずだった、剣技の稽古は明日に延期しようぜ今日の所はハンスは大人しく横になってろよ。いいな?」
 「え?そうなんですか?つまんないですね。」
エディがハンスの頭をつかんで
 「ほらほら、とっとと横になりに行けよ。お前に病気にでもなられたら俺たちは心配で不眠症になっちまうぜ。」
 「あーあー、わかりましたぁ、つまんないですよ。」


 ハンスは仕方なくベッドに横になって小さな音で古い子供向けアニメの主題歌集をコンピューターに鳴らしてもらっていた。しばらく聞いていたら隣の部屋の方からひそひそと話し声が聞こえてきた。
 「おかしいなぁ」
 ハンスがいぶかしく思ったのも無理はない。この部屋には今はハンス一人だし隣の部屋の声なんて宇宙船の中では聞こえるはずがないのだ。ハンスはよく耳をすましてみた。
 「そうです、私の知る限りのことをお伝えすると誓ったではありませんか。現在この船には三人の大人と一人の子供が乗船しております。もちろん私がスパイであることなど、誰にもわかってはいません。・・・・はい、はい、そうですね。子供一人殺すのなんて訳はないです。後の二人も隙をつけばたやすく殺せます。なにしろ、連中は根っからのお人好しですから。・・・・はい、それではこれで定時連絡を終わります。・・・・コードナンバー666シリウスサタンでした。」
 ハンスは凍り付いた。誰か大人達のうちの一人がスパイでこっそり隠れて仲間に通信しているのがどうしたわけかハンスに聞こえたのである。
 「もしかして、一瞬亜真空にさらされたせいで僕に超能力が身に付いたのかもしれない。・・・どうしよう。今のでは誰がスパイなのか全然わからないぞ。ということは誰にも相談できないし・・・。どうしよう。」
 困惑しきっているハンスなのであった。


 ハンスは困惑しきっていた。さっきの声は一体誰なのだろう。誰が仲間を裏切っているのだろう。そんな風に思い悩んでいたら、「ピーン」と部屋のドアが鳴った。誰かがハンスの元へやってきたのだ。ハンスは入り口まで行き、ドアの開閉スイッチを押した。
 「よお、ハンス、具合は悪くないか?」
 ジェラードだった。ジェラードは手に何か容器を持っていた。
 「はい、何ともありません。ジェラードさんは今までどこにいたんですか?」
 「俺か?俺はホロデッキで剣技の稽古をしていたぜ」
 「一人でやっていたんですか?」
 「ああ、そうだよ。ホロデッキでホログラム映像相手に稽古をしていたのさ」
 「船長とエディは何をしていますか?」
 「連中はな、さっきの事故でチェスは中断して船内の点検をして廻ってるよ」
 「みんな、一人だったんですね。」
 「ああ、そうさ。お前変なことを気にするんだな。それが一体どうしたんだい?みんな、それぞれ役目があるからな、宇宙船では一人でいることは珍しくないんだぜ。あ、そうか、お前寂しくなったんだろ?ああ、そうかぁ、お母さんもお父さんもいなくて、友達もいない宇宙に一人で旅だったんだもんなあ、お前の気持ちはわかるぜ。」
 「いえ、そんなんじゃないですよ。」
 「まあまあ、そう隠すなって。誰だってこの広い宇宙では寂しい気持ちになることは、あるもんなんだぜ。お前だけじゃないさ、心配するな。ああ、そうだ、これこれ」と言ってジェラードは手に持っている容器をハンスに手渡した。
 「プリンだ。フード・ジェネレーター製だから、本物ほど美味くはないけどな。」
 「え?なんで、プリン持ってきたんですか?」
 「お見舞いだ」
 「・・・やっぱり、ジェラードさんとは思えないな。・・・」
 「え?今なんて言った?」
 「いえ、何でもないんです。」入り口のドアがまた「ピーン」と鳴った。また、誰かが訪ねてきたのだ。ジェラードがドアの開閉スイッチを押すと、カーク船長がやってきたのだった。
 「おい、ハンス、大ニュースがあるぞ。」
 ジェラードが面白そうにカーク船長に訊ねた。
 「何ですか?面白いことが何かあるんですか?」
 「おうっ、お前当ててみろ」
 「うーん、なんすかねえ、絶世の美女がこの船に乗り込む予定があるとか?」
 「おおっっ、お前、勘がいいなあ」
 「マジっすか?この男ばかりの小汚い宇宙船に絶世の美女が???」
 「いや、美女かどうかは、まだわからんがな。辺境紳士連盟のメンバーの母娘が次の寄港地のLC3星から乗船するんだとさ。おい、お前、よだれをふけよ」
 「えっ、よだれ?」と言ってジェラードは慌てて口元をぬぐった。カーク船長は大笑いした。
 「わははは、引っかかった、引っかかった。」
 「船長、子供みたいっすよ」
 「カーク船長、その親子連れって、どんな人ですか?」とハンスが話に割り込むと船長は
 「12才と32才だそうだ。女の子はお前より一つ上だな。優しくしてやれよ。おい、ジェラード、お前は母親の方に変に優しくし過ぎるなよ」
 「ちぇっ、てやんでぇ、それはエディに言えってんだ。」
 「なんか言ったか?」
 「なんでもありません。」と、そこへ、またドアが鳴った。もちろんエディが来たのだ。この部屋に全員集合したのだった。カーク船長がエディに言った。
 「おいっ、エディ、ジェラードから何か忠告があるらしいぞ。」
 「うん?なんだ。エディ?」
 「船長、チクんないで下さいよぉ〜〜」
 「あ、なんだ、お前、俺の悪口言ってたんじゃないか?」とエディがジェラードに食ってかかると、カーク船長は面白くてたまらないといった風にエディに言った。
 「いやなに、32才の女性が次のLC3星から乗船するとしたらエディはどういう行動に出るだろう、ってことを話してたのさ。」
 「ふん、俺は女なんかにうつつを抜かして自分を見失うような男ではないですよ。もし、そんな女が乗ってきたら無視してもいいくらいですよ」
 「それがな、本当に乗ってくるんだよ。」
 「えっ、まじっすか???」
 ハンスは一人で考えていた。
 (この中に裏切り者がいるとはとても思えない)


 「なあ、エディはさ、32才の女が来たら無視するんだよな?」カーク船長が皮肉たっぷりにエディに念を押した。もちろんエディが女性を無視したりするはずがないことは誰にもわかっていることだった。エディは真剣な顔をして言った。
 「いや、それは単なるものの例えってやつで、初対面の女性を無視したりするのは紳士として許されないと言うか、男としてですね、女性には優しく接しないと失格というか・・・」
 「ははは、エディ、冗談だよ、冗談。お前からフェミニストな面を取ったら何も残らないだろう?」
 「そりゃあ、あんまりですよ。ちぇっ、最初から女性が乗船するなら乗船するとはっきり教えて欲しかったっすよ。な、ハンスもな、男ばかりの宇宙船よりも、32才でも、一人は女性がいた方がいいよな?」
 「はい、子供の方は12才だそうですから、友達になれたらいいなぁ、って思いますよ。」
 「えっ、親子連れなのか?うーん、こぶつきなのか。どうしたもんかな?」
 それを聞いてジェラードは
 「おいおい、エディ、どうしたもんかなぁ、って、別にこぶつきでも単なる乗客同士としては関係ないだろ?ってことはだよ、エディとしては恋愛のターゲットにしようという気持ちが少しはあるってことだよな?」
 「ちぇっ、恋愛っていうかさ、やっぱりこの男ばかりの宇宙船だと、なんか少しはときめいてみたくなるだろ?でも、夫がいるなら問題外だけどな。」
 「そりゃ、わからないぜ、だって宇宙を旅行するのに母と娘だけってのはバツイチかもしれないぜ。ねえ、船長?」
 「ふむ、それはわしにもわからんが、しかし、顔を見る前から想像だけで色々言ってみてもつまらんと思うぞ。」
 「そうですね、しかし、LC3星には明後日到着予定でしたね。その人達が我々の中にうまく溶け込んでくれたらいいっすね。」
 「そうだな、エディも必要以上に優しくするなよ。」
 「ちぇっ、船長は意地が悪いっすよ。」
 「いやいや、お前に惚れたとしてだな、その女がお前にとって好みでなかったらどうするつもりなんだ?」
 「ああ、それは厄介ですね。んーー。」
 「ははは、エディが考え込んでるぜ。な、ハンスもさ、その女の子がすごく可愛くて性格良かったらいいけどな。」
 その時船長の腕の通信機が「ぴぴぴ」と鳴った。
 「おっ、亜空間通信が入ったな。ハンスの部屋のパネルを使わせてもらうよ。」とカーク船長は言って宇宙船のコントロールパネルを操作し始めた。
 「おおっ、今話していた、女性達のプロフィールが連盟から送られて来たぜ。おおっ写真がダウンロードされてるみたいだぞ」
 一同はみんな感嘆の声をあげた。
 「おおおおっ」
 それは二人の上半身の写真だった。画面右側に母親の方、左側に娘の方が写っていた。それはかなりの美人親子だった。髪の色は二人とも明るい茶色のロングヘアで目は青緑色の瞳をしていた。しかし、二人とも生真面そうな顔をしていた。ジェラードか言った。
 「おいおい、かなりの美人だな。なっ、エディもそう思うだろ?」
 「うん、そうだな。しかし、性格きつそうな印象だなあ。」
 プロフィールを読んでいたカーク船長は声を潜めて言った。
 「おいおい、この母親、ミス・シェリル・パルトロウだってよ。おいおい『ミス』だってよ!ってことはだよ。過去はどうでも、独身だよな」
 「船長、興奮しすぎですよ。船長は奥さんいるでしょう?」
 「うん、残念ながらいるんだよな。しかし、これはジェラードとエディが仲間割れすることにならないか心配だな。はっはっはっ」エディは真剣そのものの顔つきで
 「ジェラード、正々堂々と勝負しろよ。卑怯な手を使うなよ」
 「何言ってんだ、それはこっちの台詞だぜ。」
 「おいっ、なんだこの女、合気道三段だそうだぞ」
 「げっ」とジェラードとエディは同時にうなった。
 エディは「う〜ん、手強そうな女性だな。しかし、こちらが紳士的に振る舞えば投げられることもないぜ、なあ、ハンス。」
 「そうですね、エディさんがエッチなことをしなければ何も問題はないでよね。」
 「あいたたた、こりゃあ一本取られたな。ハンスのその女の子と気が合うと良いな。」
 「その子はソニアって言うそうだ。」


 つづく


メニューに戻る