予告状


 その日、絹代おばあちゃんが珍しくうろたえていた。差出人不明の手紙が届いたのである。「五月三十一日零時、白い竜のぬいぐるみが姿を消すだろう。」おばあちゃんは駆けつけた警官に言った。「あの白い竜のぬいぐるみは六十年前の私が産まれた日に、我が一族専属のぬいぐるみ師に特別に作らせたものなのです。以来六十年常に私の側にいた我が家の宝です。私にとっては友達も同然なのです。」孫の博文が提案した。「みんなでぬいぐるみを取り囲んで部屋に鍵をかけましょう。そうすれば誰も手出しはできませんよ。」一同はその提案に従い、時計を見つめ、固唾をのんだ。零時になりその場に声が響いた。「私もめでたく還暦を迎え、竜のぬいぐるみの国の掟により赤いちゃんちゃんこを着用し、紅白の竜のぬいぐるみとなります。いきなり白が消え紅白が現れれば絹代さんも驚くでしょう。それで予告した次第です。」 完

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